⚖実際にあった判例~再建築不可物件であることの重要事項説明が正しくされていない事に対する損害賠償請求の棄却~
2024/08/03
平成26年9月、Aは売主事業者Xとの間で中古戸建を代金4,580万円で購入契約し、宅建事業者Yに仲介手数料154万円を支払いました。
本物件は、昭和51年に元の土地から分筆された土地で、建物部分の土地1と行動につながる通路部分の土地2の2筆からなる旗竿地でした。
そして、この分筆の際に作成された地積測量図によれば、土地1と土地2の接合部の幅が2mと記載されていましたが、本物件の販売に際して作成された実測図では土地1と土地2の接合部の幅は1.98mとの結果になりました。
このため、宅建事業者Yは、重要事項説明書の「敷地と道路との関係による制限」の箇所に、「対象不動産は建築基準法に定める接道義務を満たしていないため、建築物の建築はできません。また、現在ある建築物については、増改築、再建築はできません」と記載し、Aに説明しました。
尚、建物は平成3年に当時の土地所有者が建築確認(以下、平成3年建築確認)を得て新築したものでした。
しかし、その後Aは次の通り主張し、売主事業者Xと宅建事業者Yらを提訴しました。
売主事業者Xに対して・・・再建築不可物件を本来の評価額の4.5倍の高額で売却した暴利行為による公序良俗違反に基づく無効または消費者契約法(不実告知)による取り消しを原因とする売買代金返還
宅建事業者Yに対して・・・広告に接道義務を満たしていない旨の記載がなかったこと、重要事項説明時に「柱一本残せば建て替えられる」と誤った説明をしたことによる説明義務違反に基づく、評価額と購入額の差額3,580万円および仲介手数料相当額154万円の損害賠償
これに対し、売主事業者Xは、本件物件の売買代金は近隣の戸建住宅の取引金額(7,500万円~8,400万円程度)より低廉であり、これは再建築不可の物件だからであると主張しました。
また、宅建事業者Yは、本件建物の具体的な建替え方法を説明したことはなく、本件建物が接道義務を満たしていない場合に、建築確認を要する増改築や建替えはできないこと、建築確認を必要としない改造、改装、リフォーム等は可能であることなど、一般的知識に属する事項を話したにすぎないと反論しました。
上記の提訴に対し、裁判所は次のように判示し、Aの請求を棄却しました。
宅建事業者Yは正しい説明をしたか
Aは、宅建事業者Yが重要事項説明を行う中で「柱一本残せば建て替えられる」との説明を受けたと主張する。
しかし、接道義務を満たしていないという説明をしながら、柱一本残せば建て替えられると説明することは、矛盾した説明をすることになり、説明を受けるAを混乱させることになるから通常は避けるものと思われることからすると、客観的な証拠のない限りそのような説目を行ったとは認定しがたい
暴利行為か否か
Aは、他の宅建事業者が査定した本件不動産の価格査定書において、本件土地が見接道なため再建築不可となることを指摘した上で査定価格を1,000万円としていることを根拠とし、本件売買契約が暴利行為であると主張する。
しかし、当該査定書では、各々の要素をどのように考慮し、どの程度の減価要因としたのか不明である
不実の告知の有無
Aは本件建物に係る平成3年建築確認は接道義務を満たしておらず無効であるのに、平成3年建築確認がされていることを告知したことが不実告知に当たると主張する。
しかし、建築確認は行政処分であって、これが取り消されるか、あるいは重大かつ明白な瑕疵があって無効であるといえない限りは有効なものであるところ、本件物件につきと規定行政庁において平成3年建築確認が適法なものではないとして違反建築物として取り扱われていると認めるに足る証拠はない。
そうすると、本件売買契約につき、平成3年建築確認がされているということを前提として手続きが進められたことに問題はなく、この点について不実の告知があったとはいえない。
Aは、宅建事業者Yが本件不動産を売り出すにあたり、本件広告に本件不動産が説明義務を満たしていない事を記載していなかったことをもって説明義務違反があったと主張する。
しかし、本件売買契約の取引全体を通してみた場合には接道義務を満たしていない事の説明があったといえる。
東京地裁 令和3年8月25日判決
※本文は(一財)不動産適正取引推進機構より抜粋して掲載しております。
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