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⚖実際にあった判例~契約した賃貸アパートの清掃が不十分であった等とする損害賠償等の請求が棄却された事例~

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⚖実際にあった判例~契約した賃貸アパートの清掃が不十分であった等とする損害賠償等の請求が棄却された事例~

⚖実際にあった判例~契約した賃貸アパートの清掃が不十分であった等とする損害賠償等の請求が棄却された事例~

2024/10/05

令和元年9月、Aは賃貸人である宅建事業者Bとの間で、Aの子の通学のために東京都下の賃貸アパートの1室(本物件)について、月額賃料62,000円で賃借する契約(本契約)を宅建事業者Yの媒介で締結しました。
本契約締結に先立って、YがAに交付した重要事項説明書や本契約の書面において、Aが退去する際には、入居期間に関わらずハウスクリーニング費用(税別5万円)をBに支払う旨の記載がありました。

 

その後、Aは本物件の引渡しを受けた際、賃貸人Bに室内が汚れているとの連絡をし、これを受けてBの従業員が本物件に赴き、室内の清掃を行うとともに、Aの求めに応じて残置されていた冷蔵庫や照明器具を撤去しました。
その際にAは室内の清掃がなされていない状態で引渡しをされたことから、本契約に定めのある退去時のハウスクリーニング費用の支払いを免除するようにBに申し入れたもの、Bはこれを拒否する回答をしました。

 

また、AはIHコンロ等台所設備も故障しており、汚損が激しいとして、賃貸人Bにその交換を求めました。
後日、Bはは内装工事業者とともに本物件を再訪した際にその工事業者から、当該台所設備は特注品であり、補修が困難であるとの見解が提示され、Aの要望する条件も踏まえたものに交換することとし、それを探すのに時間を要したため、交換作業の完了は同年11月末となりました。

 

同年12月、Aは賃貸人Bが本物件の引渡しに当たり清掃業務を怠った等として、
1)退去時に支払うこととされていたハウスクリーニング費用
2)室内清掃への対応に伴う休業補償
3)台所設備が使用できなかったことによる損害賠償
4)慰謝料
等60万円の支払いを求めてBを提訴しました。

これに対し、賃貸人Bは
1)Aの主張する清掃義務については本契約上定めがない
2)前賃借人の退去後に原状回復工事を行っており、清掃不良はなかったが、穏便にすますために従業員を派遣する等して対応したに過ぎない
3)台所設備の交換はAの要望に応えるために時間を要したものである
等として争いました。


裁判所は、次の通り判示して、Aの請求を棄却しました。


賃貸人Bの責務不履行の有無について

賃貸人は、民法第601条の規定に基づき、賃借人に対して賃貸物の使用及び収益をさせる義務を負う。
また、民法第606条の規定に基づき、賃借物の使用および収益に必要な修繕をする義務を負う。
これらに照らせば、賃貸人は賃借人に対し、知那智物を使用収益に適した状態において引き渡す義務、具体的には賃貸物の築年数、品質、家賃等に照らし、賃借人の居住に支障がない程度に清掃や必要な修繕を行った上で賃貸物を引き渡す義務があるものと解される。

 

本件についてみると、本物件は築後約30年を経過した建物であり、月額賃料62,000円で賃貸されたところ、賃貸人Bは前賃借人退去後に原状回復工事を行い、次の賃借人が居住するには支障がない程度に清掃を行ったものと認められる。

 

これに対し賃借人Aは、「台所設備は木部から汚水が染み出して腐食し、虫が湧き、異臭を放っていた。備え付けのIHコンロは作動せず、電子レンジは食品の跳ねた油まみれ、冷蔵庫は汚水で汚れた綿棒が庫内に残っていた。室内にはゴキブリがいた」などと主張する。
また、台所設備の交換工事までの約2か月間、「ゴキブリや害虫による恐怖により睡眠もままならず、料理も湯沸かしもできなかった。支払う家賃からは想像が出来ない生活を強いられ、精神的苦痛を被った」などと訴えている。

 

しかし、証拠提出された写真からはこれらが直ちに判別できない上、築後約30年を経過した比較的家賃の低い建物の内装としては経年変化や通常損耗としてやむを得ない範囲のものであると認められるものもあり、居住に支障があるとまではいえない。
また、IHコンロが作動しなかったとと認めるに足りる証拠もない。
しかも、賃貸人Bは賃借人Aの求めに応じて従業員を派遣して追加清掃した上、Aの要望の強かった台所設備の交換工事を行ったことが認められるが、これについては剥げや汚れがやや目立っていたものの、直ちに新品への交換まで必要な状態であったとは認めるに足りない。
この点に関し、Aからの指摘箇所についてBは当初補修を考えていたが、工事業者による下見の結果、補修が困難であることが分かり、台所設備が特注品であったことや、原告の要望する条件に沿うものを探すのに時間がかかったことが影響して、結果的に交換工事に時間を要したことが認められる。
従って、その工事完了までに不当に多数の日数を要したともいえない。

 

以上によれば、賃貸人Bに本契約上の責務不履行があったとは認められず、賃借人Aの請求を棄却する。


引渡しの際の賃貸人の清掃義務に係る裁判例はあまり見られないと思われますが、「清掃」の状態に関する賃貸人・賃借人の解釈は時に食い違う事も有り得ます。
本事例においても、「賃貸人は賃貸物の築年数、品質、家賃等に照らし、賃借人の居住に支障がない程度に清掃や必要な修繕を行った上で賃貸物を引き渡す義務がある」と判示されています。
このようなトラブルを回避するためにも、内見原状回復工事や室内クリーニング後に必ず室内を確認することが大事になってきます。

 

※本文は(一財)不動産適正取引推進機構より抜粋して掲載しております。

 

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