📰家族信託の落とし穴? 節税対策には利用できない特例とは
2023/03/10
「家族信託」という制度に興味を持っている方もいらっしゃるでしょう。
ただ、この家族信託は「契約」だと知っても、税金面ではどうなるのか、だれが税金を支払うのかなど、制度が複雑なだけに、すぐに回答することは困難です。
今回は、家族信託を利用した時の税金について知っておきたいことを紹介します。
家族信託の税金はだれが支払う?
家族信託は、「委託者」「受託者」「受益者」という人物設定をだれにするかということから始めます。
詳しい制度の内容は本稿では割愛しますが、ここで覚えておいていただきたいのは、課税関係が発生するのは、家族信託の「設定時」「信託している期間中である管理や運用時」、そして「信託終了時」という3つの段階です。
信託は、「委託者」が「受託者」に信託財産を預けて管理してもらう制度ですから、契約にそって所有権が変わると、信託財産は受託者名義となります。
ただ、実際には財産の利益を享受するのは「受益者」で、受託者に利益が発生することはありません。
つまり、「受益者課税の原則」となり、課税は受益者に対して課税されるのが基本です。
ただ、課税されないからといって、何もしなくてよいわけではありません。
受託者には法定調書を作成し、提出するという義務は発生します。
残った信託財産を受け取る「帰属権利者」とは
通常、財産の所有者が変われば、贈与税などの税金が課税されます。ただ家族信託の特徴として、家族信託契約時に「受益権」を委託者が持っている場合、信託財産の名義を子どもなどの受託者に移転しても、「受益権」は移動していませんので、その時点では贈与税は発生しないというだけです。
ただ、受益者を委託者以外の者に設定した場合、『受益権』を委託者から移転させますので、受益者に贈与税が課せられることがあります。
受益権を相続した場合には相続税が発生する場合があります。
家族信託の契約を作る時に、「委託者」「受託者」「受益者」をだれにするのか決めることはもちろん必須なのですが、最終的に残った財産を受け取る「帰属権利者」についても考えておくとよいでしょう。
意図しない人物に残余財産が渡らないように、さまざまなケースを想定しながら、家族信託の遺言代用機能を効果的に活用したいものです。
家族信託は、節税をする制度ではないと説明を受けた方もいるかもしれませんが、そのとおりです。
さらに、今回、以降で説明する通達のような事例について、想定していないケースも出てきました。
最後に財産を受け継ぐ方が支払う税金が多くなるかもしれない事態を想定すると、自分の気持ちだけで家族信託を設定するのでなく、周囲にも丁寧な説明が欠かせなくなるでしょう。
帰属権利者が支払う税金が増えるかもしれないというケースを次段で説明します。
東京国税局の文書回答辞令に注目!? 特例が使えないのは想定外
空き家の発生を抑制するための特例措置 (空き家の譲渡所得の3000万円特別控除)について、売却して課税されることを嫌がって空き家のままにならないよう売却を促すための特例があります。
居住用の不動産を相続した相続人が耐震リフォーム、または取り壊しをした後に、その家屋または敷地を譲渡した場合、相続日から起算して3年を経過する日の属する年の12月31日までに売却等すれば、その譲渡にかかる譲渡所得の金額から3000万円を特別控除できるというのが、この特例です。
この制度が使えるかどうかが、税金が高くなるかどうかの分かれ目です。
この特例が、適用対象者を「相続または遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」をした相続人となっているのは、以後適正管理の責任を負うことになるということが理由と考えられます。
今回、以下のように回答されています。 「帰属権利者による残余財産の取得を相続人による相続または遺贈による財産の取得と同様に取り扱うことは相当ではないと考えられます。
以上のことから、信託契約に基づき、委託者兼受益者の相続開始という信託終了事由の発生により信託が終了したことに伴い、当該信託に係る残余財産を帰属権利者が取得したことは、本件特例に規定する相続人による「相続または遺贈による被相続人居住用家屋等の取得」に該当するとは認められず、また、死因贈与契約に基づき当該残余財産を取得したとする事情も認められませんので、当該残余財産の譲渡に係る譲渡所得の計算上、本件特例の適用を受けることはできません」 (引用:国税庁「信託契約における残余財産の帰属権利者として取得した土地等の譲渡に係る租税特別措置法第35条第3項に規定する被相続人の住居用財産に係る譲渡所得の特別控除の特例の適用可否について」) 長々と書いてしまいましたが、売却した時に3000万円の特別控除が控除できなければ、譲渡所得に対する課税が多く見積もられることもあるということです。
ただ、「なお、この回答内容は、東京国税局としての見解であり、事前照会者の申告内容等を拘束するものではないことを申し添えます」と書いていますので、「絶対に適用されない」と言っているわけではないのが難しいところです。
不動産の相続が予想されるときには、頭の隅に置いておくべき情報といえるでしょう。
引用:Yahoo!ニュースより
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