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⚖実際にあった判例~事業用物件の賃貸借契約/賃貸人と媒介業者の説明義務~

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⚖実際にあった判例~事業用物件の賃貸借契約/賃貸人と媒介業者の説明義務~

⚖実際にあった判例~事業用物件の賃貸借契約/賃貸人と媒介業者の説明義務~

2023/08/19

平成30年4月頃、飲食場を営むXは宅建事業者A2に対し、セントラルキッチン兼店舗として使用する物件の紹介を依頼しました。
同年5月、A2はX氏に東京都内に所在するA1(不動産賃貸事業者)所有の建物の地下1階部分(本物件)を紹介しました。
紹介用紙には、【前業種:ダイニングバー、重飲食相談】等の記載がありました。
XはAの案内で本物件を内覧し、A2に対して電気、ガス、水道の各設備の容量を照会しましたが、排気ダクトの容量については確認を求めませんでした。

 

後日、XはA2にセントラルキッチン兼店舗を営業内容とする本物件の入居申込書を提出しました。
A2はXに電気、ガス、水道の各設備の容量を回答。
併せてA2はX氏に内装工事事業者への各設備の容量の確認を求め、その確認が取れたらA1氏に説明をする予定である旨を連絡したところ、XはA2に対して「設備に関してクリアできているので、話を進めてほしい」旨の返答をしました。
同年6月、A1とXはAの媒介により、本物件の賃貸借契約(本契約)を締結するとともに、X氏は前賃借人との間で排気ダクトを含む内装・什器等を現状有姿で譲り受ける【造作譲渡契約】を締結しました。

 

同年7月、Xが内装改装工事に着手たところ、翌月に工事業者から「設置を予定している排気設備に対して排気ダクトの容量が40%程度しかない」との報告を受けました。
これを受けて、X氏はA氏を通じてY氏とその改修工事の協議をしましたが、建物の構造上、多額の費用を要することが判明したことからX氏は出店を断念し、同年11月にY氏に対して本契約の解除通知をしました。

 

平成31年1月、Xは「Y氏には本物件を使用収益させる義務の違反が、Aらには改修に多額の費用を要すること等の説明義務違反がそれぞれあった」として、Aらに既払賃料・賃借に要した費用等・逸失利益(1,644万円余)の支払いと、A1に対してはこれに加えて保証金(320万円)の返還を通知を行いました。
Aらはともにそれらの支払いを拒絶したことから、同年3月、XはAらにそれらの支払いを求めて提訴しました。

 

令和3年3月、上記の請求を全て棄却する判決が言い渡されたことから、これを不服とするXが控訴しました。
裁判所では、次のように判示し、Xの控訴を棄却しました。

 

・特段の事情がない限り、宅建事業者に目的に合致する物件を紹介すべき義務はない
媒介の対象物件について、賃借人の使用目的に合致するものであるか否かについては、その営業形態・設備改修の可能性等複合的な要因に大きく影響されることから、特段の事情がない限り、媒介事業者において、賃借人の使用目的に合致する物件を紹介すべき義務を負うとは解せない。
ⅰ.Xは、本物件を内覧し、排気ダクトについても目視を行い、電気、ガス等の各設備の容量をA2に照会、回答を得ている
ⅱ.Xは、A2から各種設備について内装工事業者に確認を求められていた
ⅲ.Xの内覧から本契約締結まで10日以上あった
ⅳ.Xは前賃借人から排気ダクトを含む内装・什器等を現状有姿で譲り受けている
ⅴ.Xは、他所で飲食店の経営を行っていること等からすれば、Xは排気ダクトの容量が自らの目的とする用途に適したものであるか否かについての検討を容易に行い得る立場であった。
 また、A2に対し、明確に排気容量の要望を伝えたとは認められず、A2において本物件がXの計画する営業形態に適したものとであるか否かの判断を行うべき状況であったとも認められない。
 そうすると、A2はXに対して、Xの使用目的に合致する物件を紹介すべき義務や説明義務の違反があったとは認められない。

・不動産賃貸事業者(A1)に義務違反はない
Xは、A1が自らの使用目的に合致する建物を引き渡さなかったことは、A1の義務違反にあたると主張する。
しかし、A1は本契約締結後に速やかに本物件をXへ引き渡しており、排気ダクトについても一定の性能を保証したような事情もうかがえない。
また、前記の通り、Xは排気ダクトの容量が、自らの計画する業態に適したものであるか否かについての検討を容易に行い得る立場にあったことからすれば、A1に本契約上の義務があったとも認めらない。


よって、Xの控訴はいずれも理由がないことから棄却されました。
今回の件は、賃借した物件が自らの使用目的に合致しなかった賃借人が、賃貸人と媒介事業者に対して賃借に要した費用や逸失利益等の支払いを求め棄却された事例です。
裁判記録によると、賃借人は「本契約の締結以前に他の店舗を賃借した際に媒介を依頼した宅建事業者は、自らの使用目的に合致する設備等を備えているか確認の上、物件を紹介してくれた」とも主張していました。
しかし、媒介事業者や賃貸人は賃借人が予定している具体的使用内容まで把握していないことが多いうえ、そもそも建物や設備の専門家ではないことから、これらについては賃借人の責任で専門家に調査・確認を依頼する必要があります。

賃借した建物の構造や設備の問題から、賃借人が目的とした使用ができなかったことから、賃借人が賃貸人や媒介事業者に賠償を求め棄却された事例はほかにも見られます。
このようなトラブルを回避するためにも、賃貸人や不動産業者は使用目的に応じ、構造・設備については賃借人側で十分確認するようアドバイスする事が大切です。

 

※本文は(一財)不動産適正取引推進機構より抜粋して掲載しております。

 

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