⚖実際にあった判例~貸店舗での無断改装工事、近隣騒音への不十分な対応による契約解除~
2023/09/14
個人である貸主Xは、自身が所有する軽量鉄骨2階建の建物の1階部分を宅建事業者Aの媒介により、コインランドリーの営業を目的とした借主Yとの間で令和岩塩12月に賃貸借契約を締結しました。
同契約では、契約期間2年間・賃料175,000円で「賃借人が原状を変更する場合には、その内容・方法について書面をあからじめ賃貸人に提出し、書面による承諾を得ること」となっていました。
賃借人Yは、コインランドリー機器の設置および運営管理を、法人Bに委託しました。
運営管理会社Bは、本契約の半年前にYとは別の依頼で本物件を内見した事がありましたが、その際に物件をコインランドリーとして使用するためには、既存の建物北側外壁の排気口を拡幅すると構造や排気上の問題があるので、東側外壁に新たに穴を開け排気口を設置するのが良いと考え、宅建事業者Aへ照会していました。
その際、Aからは「図面を提出してもらったうえで、貸主Xに確認する」と答えていました。(その後、Bからは図面の提出はありませんでした)
本契約と同日に建物内部のレイアウトが運営管理会社Bから宅建事業者Aに送付されましたが、排気口の位置の記載はありませんでした。
令和2年1月、BはAに内装工事の開始と、北側外壁の排気口の利用などを記載したメールを送信しました。
それを聞いた貸主Xは、「すでにある穴を利用して吸排気口とするのは問題ない」とBに回答しましたが、Bは東側外壁に穴をあけることが分かる資料を送付しないまま工事を完了しました。
同年2月、コインランドリーは営業を開始しました。
建物2階を賃借していたCが、機器の振動・騒音に驚き、設置状況の確認を運営管理会社Bに要請。
さらに、東側外壁に設置された排気口から熱気、綿ゴミ、埃などが通路へ排出されていることが目立つようになり、CはBに苦情を申し立てました。
現場確認を行ったBは、「危機の設置方法に問題はない。建物の構造上、振動や騒音を完全になくすことは不可能」として、機器の回転数を下げ、深夜営業を中止することを提案しました。
この提案に対して貸主Xは、東側外壁に排気口が開けられていることに驚いたこと、振動・騒音は防止装置が付いていない事が問題であるとしたメールをBに送りました。
同年5月、貸主X、借主Y、宅建事業者A、運営管理会社Bによる話し合いが行われ、その後も対応策が協議されましたが状況は改善されず、Cからの苦情は継続しました。
Xは、令和3年1月、Yの債務不履行による信頼関係の破壊を理由として本契約を解除したと主張。
建物の明渡し、約定違約金(賃料および共益費の6カ月相当額105万円)等の支払いを求める訴訟を提起しました。
・借主Y、運営管理会社Bは工事内容を伝えず、書面による承諾も受けていない
Yから委託を受けて、宅建事業者Aとの交渉等を行っていたBは、賃貸借契約で建物部分の内装工事等を行う場合には、予め工事内容等が分る詳細を記載した書面を貸主Xに提出し、書面による承諾を得なければならないことを認識し、実際に工事内容の分る資料の提出を求められていました。
にもかからわず、工事内容をXに伝えようとせず、書面によるXの承諾も得ていません。
それだけでなく、建物東側外壁に穴をあけて排気口を壁の外側に設置することについて、事前にXに承諾を得たと強弁し、Yはこれを前提に排気口の移設を求めるXの要請をたびたび拒んでいることが認められる。
・貸主X、宅建事業者Aからたびたび改善を求めるも振動・騒音について被害が生じ続けている
排気口が建物部分の東側外壁に設置されたため、排気口から排出される熱気、綿ゴミ、臭いなどが通路に排出され、その通路を通ってしか外に出られないCが迷惑を被っている旨をたびたび訴え、Xもたびたび改善を求めました。
しかし、借主Y側は、機器の回転数を下げたり、清掃をしたり、深夜営業を停止したり、店内に注意書きをしたフィルターを設置したりするなどの対策を講じた旨述べるにとどまっており、しかも被害はその後も生じ続けていることが認められる。
さらに、Cが機器の作動により生ずる振動や騒音によって日常生活に支障をきたしているとたびたび訴え、Xもたびたび改善を求めているが、「設置に問題はない。建物の構造の問題である」としてこれにも対応してきていないこと、大量の水が流れるときに生じる音による騒音の阻止に至っては、対策を知りながらこれを現在ま実施していないことが認められる。
借主Yは本契約の条項違反行為(書面による貸主Xの事前承諾を得ていなかったこと等)だけではなく、事前承諾を得たと虚偽の強弁も行っている。
さらに、Cの申出が令和2年4月以降たびたびなされたことに対し、「相応の対応はしている。あとは建物の構造上の問題である」などとして、効果がでるような対応をしないまま約7ヶ月を経過させたということができるから、令和2年11月頃にはXとYの信頼関係は破壊されていたといえる。
従って、XがYに対して行った契約の解除は有効であると判決がでました。
コインランドリーに関わらず、店舗等の借主は営業のための改装工事等を行う場合には契約書の定めに沿った手続きを行うとともに、営業に伴い近隣住民などへ騒音等の被害が出ることがないよおうに十分に対策検討しておく必要があります。
※本文は(一財)不動産適正取引推進機構より抜粋して掲載しております。
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